本屋に入ると、様々なジャンルが所狭しと並んでいる。いわゆる純文学、ファンタジー、ビジネス書、雑誌。このなかでほんの少しのエリアを、SFを銘打った作品たちが占めている。
SF小説の起源と初期の歴史
SF(サイエンスフィクション)の起源を語るには、まず「何がSFであるか」という定義を考える必要がある。広義では、SFは未来の技術や科学、宇宙、異世界など、現実には存在しない設定や状況を描くフィクションのジャンルだ。
このジャンルの起源は古代まで遡ることができるが、ヨハネス・ケプラーの物語『夢』は最初期のSFとして認識されている。月の天文学についての論文という形で記されたこの本は、月について精霊から学ぶという何とも幻想的な書き方をされている。
この本をSFたらしめるのは、科学的知見に基づいた文章構成である。というのも、この本はコペルニクスの地動説を支持するために書いた学位論文を、筆者の経験と合わせて書きあげたものだからだ。未知の世界で空想を膨らませる彼の書き方は、後世の作家たちに多大な影響を与えた。
また、現代的なSFの祖として一般的に認識されているのは、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』だ。
1818年に発表されたこの作品は、科学者が生命を創造するというテーマを扱っており、科学技術が人間社会に与える影響を描いた初期の例とされている。
19世紀後半から20世紀初頭のSF
19世紀後半になると、ジュール・ヴェルヌやH.G.ウェルズといった作家たちが登場し、SFの基礎を築いた。ヴェルヌは『海底二万里』や『地底旅行』など、探検と冒険を通じて未来の技術を描いた作品で知られている。
一方ウェルズは『タイムマシン』や『宇宙戦争』など、社会批評や哲学的テーマを盛り込んだ作品でSFを深化させた。
黄金時代とその後
20世紀に入ると、SFは急速に発展を遂げる。特に、1930年代から50年代にかけての「黄金時代」は、アイザック・アシモフやアーサー・C・クラーク、ロバート・A・ハインラインといった作家たちが活躍し、SFが一つの文学ジャンルとして確立された時期だ。彼らは、ロボット工学、宇宙探査、未来社会といったテーマを探求し、後のSF作品に大きな影響を与えた。
現代のSF
1960年代以降、ニューウェーブと呼ばれる運動が起こり、SFはより文学的で社会的なテーマを扱うようになる。フィリップ・K・ディックやユルスナール・ル・グィンなどが登場し、SFは単なる未来予測や冒険物語から、哲学的な問いや人間の存在意義を探る作品へと進化した。
現代に至るまで、SFは映画やゲーム、アニメなど他のエンタメにも多大な影響を与え続けている。SF小説は、未来の技術や社会の在り方を描くことで、読者に新たな視点を提供し続けている。