音楽はおそらく人間がかなり最初のほうに獲得した娯楽の一つだ。その始まりについて明確なことはわからないが、声や言語を獲得する過程で、他者や動物を模倣し、いつしかそれにリズムが加われば、そこに音楽があったといって差し支えないだろう。
最も古い文明であるメソポタミアからは、笛やハープなどの楽器をかたどったレリーフが発見されている。彼らがどういった経緯で音楽を楽しみ始めたのか、そしてどんな様相であったか、今となって知るすべはないが、文明活動においてさぞ重要な役割を果たしただろう。
音楽と人間
音楽は耳に残る。親が子に何かを覚えさせる時にはそれが利用されてきた。子守歌は道徳的な内容であることがほとんどであり、また地域に根付く歌はその地域の歴史や風習を忘れさせない。
古くから吟遊詩人という存在がいるのも、音楽と記憶の相性の良さを物語っている。
音楽は年代問わず、あるグループの主張を声高く拡散するために使われている。そして歌はその時代を象徴する。
不況にあえぐ時代には逆境と苦痛を叫ぶ歌が人気を得るし、景気が良ければダンスミュージックがそこかしこから聞こえてくるだろう。
インターネットの普及によって自己の存在が希薄になった昨今は、自分に自信のない若者がニッチで閉鎖的なジャンルを聴くことそれ自体をアイデンティティにしているかもしれない。逆に、好きでもない大衆音楽を大勢と一緒になって聴くことで安心感を得ようとするかもしれない。
ジャンル
一口に音楽といっても、そのジャンルは多岐にわたる。クラシック、ジャズ、ポップス、上げ始めればきりがないし、クラシックの中にもバロックやら古典やら印象派など分類をし始めればきりがない。しかし面白いのは、何かの影響を受けていないジャンルなどはないということだ。ある瞬間急に新しいジャンルが生まれるのではなく、すでにあるジャンルの延長線上だったり、二つのジャンルが組み合わさったりした結果様々な種類の音楽が生まれ、私たちを楽しませてくれる。
サブスクリプション
サブスクの台頭によって膨大なジャンルをいつでも好きな時に、どこでも楽しめる環境に私たちはある。
聞きたい音楽があれば、さっと検索して数秒後には鑑賞を始めることができる。CDやカセット、レコードという媒体が必要だった時代、もっと言えば記録媒体を頼ることができず、生音の演奏のみでしか音楽鑑賞の手段がなかった時代から考えれば、恵まれすぎていると思うほどである。
良いほうにも悪いほうにも、サブスクリプション制度がクリエイターに与えた影響は大きいが、ただ純粋に音楽を楽しみたいという意味においては、これ以上ないほどに充実している。