MBTIのタイプごとに、読書傾向を細かく考察してみよう。
個人的にMBTIという診断は好きでないし、人の性格は単純に分類できるものだとは思わないけれど、MBTIのフレームワークを参考にすると、それぞれのタイプにどんな本が好まれやすいか見えてくるかもしれない。
考察
MBTIと読書傾向の相関についての考察は、性格心理学と認知科学の領域にまたがる問題であり、単純な因果関係を示すことは難しい。しかし、MBTIが示す認知傾向と、読書行動に一定の関連性が見られる可能性はある。特に、情報処理のスタイルや意思決定の傾向が、どのような種類の書籍を好み、どのようにそれを消費するかに影響を与えることは十分に考えられる。
MBTIの4つの指標を考慮すると、読書傾向に影響を与える要因として以下のような側面が挙げられる。
外向(E)・内向(I)と読書の関係
一般的に、内向型(I)は情報処理を内面的に行う傾向があり、読書を通じた思索を好むとされる。一方で、外向型(E)は他者との対話や実践を通じて学ぶ傾向が強いため、読書を好む場合でも、それを議論や実践につなげることを重視する可能性が高い。したがって、内向型はより抽象的・理論的な書籍(哲学書、思想書、小説)を好むのに対し、外向型は実用的・エンタメ性の強い書籍(自己啓発書、ノンフィクション、ビジネス書)に関心を向ける傾向がある。
感覚(S)・直感(N)と読書傾向
この指標は、読書傾向に最も強く影響を与える可能性がある。感覚型(S)は現実的・具体的な情報を好み、歴史書や実務書、ノンフィクション、伝記といった「現実に基づいた本」を好む傾向がある。一方、直感型(N)は抽象的・概念的な情報を好み、哲学書、SF、ファンタジー、未来学的な本に関心を持ちやすい。たとえば、ISTJの読者が『失われた時を求めて』のような内省的な文学作品よりも、歴史に基づく戦略論を好むのに対し、INTPの読者は科学哲学や実験的な小説に惹かれることが多い。
思考(T)・感情(F)と読書のアプローチ
思考型(T)は読書を知的ツールとして捉え、論理的な分析や批判的思考を重視する。一方で、感情型(F)は読書を感情的・共感的な体験と見なし、物語や登場人物の心理に没入することを重視する。したがって、T型の読者は哲学、論理学、経済学、科学書に惹かれ、F型の読者はヒューマンドラマや詩、心理学的な書籍に強い関心を示す。
判断(J)・知覚(P)と読書の方法
J型(計画的・秩序を好む)とP型(柔軟で即興的)では、読書のスタイルが異なる。J型の読者は体系的に本を読み、リストを作成し、計画的に知識を吸収しようとする傾向がある。例えば、INTJの読者は「読むべき本のリスト」を作成し、計画的に知識を積み上げる。一方、P型の読者は好奇心の赴くままに読書を進め、途中で別の本に移ることも多い。ENTPの読者は特にこの傾向が強く、多様なジャンルの本を並行して読むことが多い。
総合的な考察
MBTIと読書傾向には一定の相関が見られるが、それは性格による単純な好みの違いというよりも、「情報の処理の仕方」や「読書の目的の違い」によるものだと言える。たとえば、同じSFを読んだとしても、INTJの読者はそこから未来の社会構造について考察しようとするのに対し、INFPの読者は物語の感情的な側面に共鳴し、ISFPの読者はその美的表現に注目するだろう。
また、個人の成長や経験、文化的背景も読書傾向に大きく影響を与えるため、MBTIがすべてを決定するわけではない。例えば、社会的要因や職業によって、J型の人でも雑多な読書スタイルを持つことがあり、F型の人でも論理的な書籍を好むことがある。
結論として、MBTIと読書傾向の間には確かに一定の関連性が見られるものの、それは単なるジャンルの好みではなく、「情報をどのように処理し、どのように活用するか」という思考様式の違いによるものであると言える。
タイプ別分析
前述のとおり、読書傾向についての分析は難しいが、本稿ではあえてタイプ別に、好きそうなジャンルを、例として具体的に本を挙げながら羅列してみる。
分析家(NT型) – 知的探究心と論理的思考
(INTJ・INTP・ENTJ・ENTP)
このタイプは知識を追求し、独自の思考を展開するのが好き。哲学書、科学書、SF、自己啓発、戦略書など、思考を刺激するジャンルを好む傾向がある。と推測。
各タイプの傾向
- INTJ(建築家) – 未来志向で戦略的
好む本: ディストピアSF、戦略論、哲学書(ニーチェ、カント)
例: 『1984年』(ジョージ・オーウェル) - INTP(論理学者) – アイデアに熱中する探究者
好む本: 科学書、数学・論理系、実験的な小説
例: 『ゲーデル, エッシャー, バッハ』(ダグラス・ホフスタッター)、『時間は存在しない』(カルロ・ロヴェッリ) - ENTJ(指揮官) – リーダーシップと実行力
好む本: 経営書、政治思想書、成功哲学
例: 『ゼロ・トゥ・ワン』(ピーター・ティール)、あとは何だろ思いつかない、、ビジネス書全般? - ENTP(討論者) – アイデアを戦わせる自由人
好む本: 反体制的な本、社会評論、ユーモアのある哲学書
例: 『ソクラテスの弁明』(プラトン)、『ファイト・クラブ』(チャック・パラニューク)
外交官(NF型) – 理想主義と感情の深み
(INFJ・INFP・ENFJ・ENFP)
感情の機微や人生の意味を探求するこのタイプは、文学、詩、心理学、哲学書、社会問題を扱う書籍を好む傾向がある。
各タイプの傾向
- INFJ(提唱者) – 深く物事を考える理想主義者
好む本: 哲学的な文学、人間の心理を探る本
例: 『夜と霧』(ヴィクトール・フランクル)、『アルケミスト』(パウロ・コエーリョ) - INFP(仲介者) – 感受性豊かでロマンチック
好む本: 詩集、幻想文学、心を揺さぶる物語
例: 『ライ麦畑でつかまえて』(J.D.サリンジャー)、『星の王子さま』(サン=テグジュペリ) - ENFJ(主人公) – 人を導くカリスマ
好む本: 人間心理、リーダーシップ、自己啓発
例: 『人を動かす』(デール・カーネギー)、『リーダーの条件』(ジョン・C・マクスウェル) - ENFP(運動家) – エネルギッシュで自由
好む本: 旅や冒険小説、自己啓発、スピリチュアル
例: 『ワイルド・ソウル』(垣根涼介)、『深夜特急』(沢木耕太郎)
番人(SJ型) – 安定と秩序を重視
(ISTJ・ISFJ・ESTJ・ESFJ)
現実的で責任感が強く、規範を重んじる傾向があるため、実用書、歴史書、自己啓発本を好むことが多い。
各タイプの傾向
- ISTJ(管理者) – 規律を重んじる実務家
好む本: 歴史書、自己啓発、ミステリー
例: 『失われた時を求めて』(プルースト)、『シャーロック・ホームズ』シリーズ - ISFJ(擁護者) – 優しさと安定を求める
好む本: ヒューマンドラマ、感動小説
例: 『小公女』(フランシス・ホジソン・バーネット)、『きみに読む物語』(ニコラス・スパークス) - ESTJ(幹部) – 組織を動かす現実主義者
好む本: ビジネス書、実用書、歴史書
例: 『影響力の武器』(ロバート・チャルディーニ)、『ビジョナリー・カンパニー』(ジム・コリンズ) - ESFJ(領事) – 社交的で思いやり深い
好む本: 自己啓発、恋愛小説、ヒューマンドラマ
例: 『プライドと偏見』(ジェーン・オースティン)、『ビジネスマナーの基本』
探検家(SP型) – 柔軟性と刺激を求める
(ISTP・ISFP・ESTP・ESFP)
このタイプは感覚的な刺激を求め、アクションのある本、冒険小説、スリラー、自己啓発書を好むことが多い。
各タイプの傾向
- ISTP(巨匠) – 挑戦者
好む本: ミステリー、技術書、サバイバル本
例: 『ハードボイルド・ワンダーランド』(村上春樹)、『アウトドア完全ガイド』 - ISFP(冒険家) – 感性豊かなアーティスト
好む本: 芸術、詩、エモーショナルな物語
例: 『ノルウェイの森』(村上春樹)、『青い鳥』(モーリス・メーテルリンク) - ESTP(起業家) – エネルギッシュな行動派
好む本: 実践的なビジネス書、自己啓発、スポーツ伝記
例: 『10倍売る人の成功習慣』 - ESFP(エンターテイナー) – 人を楽しませるムードメーカー
好む本: エンタメ系、トレンド本、実用書
例: 『ハリー・ポッター』(J.K.ローリング)、『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス)
ビジネス書には疎いため総じて薄い考察になってしまった。
まとめ
MBTIと読書傾向に相関があるとすれば、性格の認知スタイルが読書の目的や方法に影響を与える。
内向型(I)は深い思索を求め、外向型(E)は実践や対話と結びつける。直感型(N)は抽象的・概念的な書籍を好み、感覚型(S)は具体的・実用的な本を選びやすい。思考型(T)は論理的分析を重視し、感情型(F)は物語や共感を求める。判断型(J)は計画的に読書し、知覚型(P)は柔軟に興味の赴くままに読む。
MBTIが読書の嗜好に影響を与えると仮定して本を選定するのもまた楽しいかもしれない。