本を開けば、そこには知らない世界や、新しい視点、心を動かす物語が広がっている。
ただ読むだけでも十分私たちの心を豊かにしてくれるが、この記事ではあえて、読書をさらに豊かにするためのアイデアを考えてみた。普段の読書体験にスパイスを加えたいときにぜひ試してほしい。
六つのアイデア
1. 読書ノートを作る
読書ノートを作ることは、ただ内容を記録するだけでなく、自分と本との対話を深めるための大切な手段だ。本を読むという行為は、ただ目で文字を追うだけでなく、心や頭でその意味を咀嚼し、自分の中に取り込む作業でもある。読書ノートは、その取り込みの過程を視覚化し、自分の思考を整理するための最高のツールになる。
たとえば、心に響いたフレーズを書き写すと、それだけでその言葉が自分の中に染み込んでいくような感覚を得られるだろう。それは作家の言葉に触れ、その背景や意図を考えるきっかけにもなる。また、要約や自分なりの解釈を書くことで、内容をただ受け取るだけではなく、自分自身で「考える」ことができるようになる。さらには、疑問や質問を書き留めることで、本の中で解決されない謎や、作中のキャラクターの動機について考察を深めることもできる。
こうしたノートは、後から振り返るときにも役立つ。時間が経つと忘れてしまいがちな感想や気づきを、ノートが鮮やかに蘇らせてくれるのだ。一冊ごとに専用のノートを作るのもよいし、複数の本を一冊のノートにまとめてもいい。自分のスタイルに合った形で自由に書き綴ってみよう。
2. 場所を工夫する
読書はどこでも楽しめるものだが、その場所を工夫することでさらに豊かな体験となる。たとえば、お風呂での読書。湯気に包まれた静かな空間で、好きな本を片手にページをめくる時間は至福のひとときだ。ただし、湿気対策として防水カバーを使ったり、濡れた手でページを触らないようタオルを用意したりする配慮が必要だ。そうした小さな準備もまた、楽しみの一部となる。
また、カフェや公園といった場所での読書もおすすめだ。カフェでは、香ばしいコーヒーの香りや、人々のざわめきが適度なBGMとなり、物語の世界に没入するのを助けてくれる。公園では、自然の中で鳥のさえずりや風の音を感じながら、本の中の世界を味わうことができる。特に、エッセイや旅行記など、現実の風景とリンクしやすい本にぴったりだ。
さらに、ベッドの中での読書も多くの人に愛されるスタイルだ。心を落ち着ける寝る前のルーティンとして、本を読むことで良質な睡眠へと導かれる。ただし、あまりに面白い本だと時間を忘れて夜更かししてしまう危険性もあるので注意が必要だ。
余談だが、こと勉強に関する読書は家で落ち着いてやるべきだ。以前、教授から「週末中にこの論文を読んでおくように」と分厚いコピー用紙を渡された。それがまた、文字が小さくて読むのに骨が折れるやつだった。週末は友達とキャンプに行く予定だったから、「まあキャンプ場でちょっとずつ読めばいいだろう」、焚火で読書なんておしゃれだなと軽く考えてた。
キャンプ場に到着して、焚き火の前で論文を広げたのだが、風が強くてページがバサバサめくれるし、暗くて読めない。仕方なくヘッドライトをつけたら、今度は蛾が光に寄ってきて、完全にお手上げ状態。友達からは「なんの罰ゲーム?」と笑われる始末だった。
結局その日は諦めて翌朝早く起きて読もうとしたが、予想外に夜更かしして疲れて寝坊。帰りの車中でやっと読み始めたものの、揺れる車内で酔ってしまい、ほぼ何も頭に入らないまま週末が終わった。教授にはしれっと「しっかり読みました」と言ったけど、内容の質問をされたときにちょっとボロが出た。
それ以来、読み物とはいえ勉学は落ち着いた環境でやるべきだと身にしみてわかった。
焚き火で読書なんて、ロマンチックに聞こえるかもしれないが、現実は甘くない。
3. テーマ読書を試す
読書をもっと深く楽しむ方法の一つが「テーマ読書」だ。これは、自分で特定のテーマを設定し、そのテーマに関連する本を集中的に読むという方法だ。たとえば、「家族」をテーマにした場合、ある家族の幸福を描いた物語や、家族間の葛藤を描いた作品を並行して読むことで、異なる作家たちが「家族」という概念にどう向き合っているのかを比較する楽しみが得られる。
また、特定の作家に焦点を当て、その人の全作品を読む「作家縦断」もおすすめだ。一人の作家の初期作品から晩年の作品までを追うことで、その人の成長や思想の変化、時代背景が見えてくる。特に好きな作家がいる場合、この方法は読書体験を格段に深めてくれる。
テーマ読書は一種の冒険だ。同じテーマでも時代や国が異なると、まったく異なるアプローチがなされていることに気づき、新たな視点が得られる。自分だけのテーマを見つけ、読書の幅を広げてみよう。
4. 共有する
読書は個人的な楽しみであると同時に、他者との交流を生む機会でもある。本を読むことで得られる感動や発見を共有することで、その体験がさらに深まるのだ。
たとえば、読書会に参加してみるのはどうだろう。同じ本を読んだ人たちと集まり、それぞれの感想や解釈を話し合う時間は、思いもよらない視点を得るきっかけになる。自分が見逃していた部分に気づかされたり、異なる解釈が新たな洞察を生むこともある。
また、SNSやブログで感想を発信するのも一つの方法だ。本について書くことで、自分の考えが整理されるだけでなく、同じ本を読んだ人との交流が生まれる可能性もある。他者との意見交換は、読書体験をさらに充実させる貴重な機会だ。私はあまり交流が得意ではないが、人の書いた批評を見るだけでも読書欲をあおられる。
5. 特別なアイテムを用意する
読書をもっと楽しくするために、ちょっとした特別なアイテムを用意するのも良い方法だ。たとえば、お気に入りのしおりを使うことで、本を開くたびに少しだけ嬉しい気持ちになれる。読書ライトも、夜の読書を快適にするための便利なアイテムだ。
電子書籍リーダーを使うのも現代的な選択肢だ。大量の本を手軽に持ち運べるため、旅行や出張中の読書に最適だ。ただし、紙の本の手触りやページをめくる音、インクの香りといった感覚的な楽しみは電子書籍では得られない。これからの時間はKindle と思っていた時期もあったが、いつの間にか紙の本に戻っていた、という人は少なくないだろう。とはいえ、Kindleの利便性の高さも確かなものだから、それぞれの良さを活かして使い分けると良い。
6. 読み方を変える
読書のスピードや方法を意識的に変えてみるのも、新たな楽しみ方だ。速読は多くの本を効率的に読む手段だが、ときにはじっくりと時間をかけて味わう「遅読」もおすすめだ。特に詩や哲学書のように、一つひとつの言葉が持つ意味やニュアンスを噛みしめる必要がある本では、じっくりと読むことでその深みを堪能できる。
一方で、小説やミステリーのようなストーリー性の強い本は、一気に読むことで物語の勢いを楽しむことができる。状況に応じて読み方を変え、本との付き合い方を柔軟に調整してみよう。